失敗を含めた“実践知”のシェアでええまちに/大阪ええまちアカデミー実践編 活動報告会2025レポート
2026年6月15日
「大阪ええまちアカデミー」は、地域や自分の未来を主体的に想像し、必要だと思う活動を始める方法を仲間とともに考え、学ぶ場です。2025年度の「活動報告会」では、「実践編」に参加した5組の実践リーダーが、この半年間で取り組んできた活動をオンライン
で発表しました。当日はこれから地域活動を始めようとする人や関心のある人も集まり、それぞれの実践と学びを共有しました。

今回も、ナビゲーターの株式会社エンパブリック 広石拓司さん、アドバイザーの特定非営利活動法人SEIN 宝楽陸寛さんからのポイント解説とともに、当日の様子をダイジェストでお届けします。
INDEX
報告1:笑ってなんぼ ゆるゆる集いましょう「集い場つくり」/茨木直子さん
報告2:誰も取り残さない健康づくり ~心と身体を「ちょこっと元気」に~/藤崎彰文さん
報告3:私の日常のささやかなバケットリストを一緒に叶えてくれる人、いませんか?/杉井奈央子さん
ナビゲーター:広石拓司(ひろいし たくじ)さん株式会社エンパブリック 代表取締役
「思いのある誰もが動き出せ、新しい仕事を生み出せる社会」を目指し、ソーシャル・プロジェクト・プロデューサーとして、地域・企業・行政など多様な主体の協働による社会課題解決型事業の企画・立ち上げ・担い手育成・実行支援に多数携わる。
アドバイザー:宝楽陸寛(ほうらく みちひろ)さん特定非営利活動法人SEIN(サイン)/コミュニティLAB所長
ビジネスからボランティアまでNPOや市民の活動のコーディネーターとして活動。対話型で居場所づくりを行う茶山台としょかん他、ニュータウンの協働で数多くのプロジェクトを手がけ、事業化やその仕組みの地域展開に取り組む。
報告1:笑ってなんぼ ゆるゆる集いましょう「集い場つくり」/茨木直子さん
仕事として障がい者福祉や高齢者の福祉にかかわってきた茨木さんは、「当事者があきらめたり、想いを飲み込んだりしてしまうことが思った以上に多いと感じていました。でも、笑ったり感動したりといった、誰もが持つ権利をあきらめたくなかった」と言います。そこで、誰でも一緒に笑い、感動し、泣くことができる集い場を目指して情報収集し、1月にトライアルイベントを開催しました。このグループがユニークだったのは、「犬や猫も一緒に」と考えたところです。
当日参加予定だった障がいのある方々は寒さが理由で来場がかないませんでしたが、子どもや高齢者、ご近所の方とその方の飼っておられるトイプードルたちが集まったそうです。中には、これまで1年間家を出ていなかった人もおり、場を持つことの意味を感じたことや、動物がみんなをつなぐ役割を再認識したと語ってくれました。

広石さんコメント:「学びを知見として発信しよう」
動いてみたことで、いろんな活動している人がいると分かったということが大切ですよね。あと、「寒くて来られなかった人がいた」とかは、やってみたからこそわかったことです。知らなかったこと、学んだこと、考えたことをリストアップして知見としてまとめるといいですね。
宝楽さんコメント:「笑顔になる人を増やす」という変化をゴールに
そう、やる前とやった後の変化や気づきを発信するのが大切だと思います。何万人ものフォロワーはいなくてもいいので、発信をすることが大切なんです。あと、「最後のこれからやりたいこと」として、「月1の定例にしたい」と書かれていましたが、頻度ではなく「笑顔になる人を増やす」という変化を大事にするゴールを設定するといいかもしれませんね。
報告2:誰も取り残さない健康づくり ~心と身体を「ちょこっと元気」に~/藤崎彰文さん
沖縄の伝統空手に取り組んできた藤崎さんは、様々な地域での健康づくり教室の開催を通じて心と身体を元気にしたいと考え、ちょこカラという空手✕健康教室の取り組みを考えました。
役所の広報誌や、活動現場の見学・体験などを経てプログラムを組み立て、2回のデモンストレーションに挑戦したのですが、実際にやってみると想定とは違う状況があったと言います。
「2回の実践では、参加者の身体の状態・年齢層が異なり、その場で瞬時に判断してプログラムを柔軟に変更する必要があり、難しかったです」という体験を共有しつつ、地域の人たちがあたたかく受け入れてくれたことがうれしかったということや、飛び込んで実践して初めて見えてくることの方が多かったと感想を語りました。

宝楽さんコメント:「すでにある地域拠点にニーズがあるかも」
どの地域にも保健センターがあり、そこでは健康づくりのいろんな活動が行われています。そうした場にボランティアとして手をあげていったら、“ちょこカラ”の広がりにつながっていくのではないかと思います。
広石さんコメント:「引き出しの多さや対応力を伝えるためにも活動報告を」
その場で状況に合わせて瞬時に対応できるのは、これまでの経験が蓄積されているからこそのことで、それは藤崎さんの強みです。当日に状況に応じて調整したという事実がnoteなどの活動報告で共有されていると、安心して参加を検討してもらえるかもしれませんね。
報告3:私の日常のささやかなバケットリストを一緒に叶えてくれる人、いませんか?/杉井奈央子さん
仕事柄、高齢者との接点が多い杉井さんは、今後やりたいことを尋ねても「特にない」という反応が多いことが気になっていて、高齢者が「どうせ無理」「迷惑をかける」と諦めてしまっているのではないかと考えました。本当にやりたいことや、日常のささやかな希望のシェアし、「実現までのプロセス」を楽しむことで、他者との緩やかなつながりや日々の生活への張り合いが生まれ、それが結果的に、孤立やフレイルの予防や軽減につながれば嬉しいと考えたのだそうです。
着目したのは自分が死ぬまでにやりたいことを書き出す「バケットリスト」です。
実際にデイサービスやってみると、想定よりも多く「やってみたいこと」が挙がり、施設職員も驚く様子が見られました。
やりたいことを可視化することで、実現に向けた行動を具体的に考えやすくなること、さらに、内容を深めていく中で、その人が大切にしていることや、大切な人への想いが見えてきたと言います。

広石さんコメント:「バケットリストを使うワークショップはニーズがありそう」
「バケットリスト」を作るのは個人的作業になりがちで、他者と一緒に言葉にするワークショップのような機会は地域に少ないですよね。これはリサーチの中で得た新しい視点です。リストをつくることが目的ではなく、コミュニケーションの機会を持つことや「あの人が元気になった」という状態が目的ということです。施設や地域で提案してみたらニーズがあるのではないでしょうか。
宝楽さんコメント:「その人のウェルビーイングプランを支援していくことが大切」
かつてなく人生が長くなってるからこそ、前向きなことを見つけることって大切ですよね。世間では高齢者は「孤立孤独という課題の当事者」と思われがちですが、その人のウェルビーイングプランを支援していくことも大切です。ぜひ、少しずつでも取り組んできたことについて発信してみてください。近い人たちの幸せを発信していくと、見ている人の行動につながっていくと思います。
報告4:チームハイツはっとりがわ/森田 圭吾さん
八尾市で高齢者向け住宅型有料老人ホーム「ハイツはっとりがわ」などを運営している森田さんは、「地域の人が気軽に出入りする場所にしたい」と思ってきました。大阪ええまちアカデミーのメンバーの協力を得て、「理想の状態」や「やりたいこと」、「現状できていること」などを整理し、広報、餅つきイベントやレンタルスペースなどの取り組みにチャレンジしました。
餅つきイベントは盛況だったものの、生活者である利用者への配慮や、スタッフへの目的共有などが十分ではなかったという振り返りもあり、まずは入居者ファーストであること、そして地域の役に立つこと、そのうえで知ってもらうこと、ということを大事にしていきたいと語りました。

宝楽さんコメント:「Will/Can/Mustのど真ん中を」
コミュニティビジネスでよく言われるのは「Will(やりたいこと)/Can(できること)/Must(求められる役割)の重なる部分を貫け」ということです。自分がやりたいことをやるのではなく、ありたい状態が発生していくような状況をどう作っていく「補助線を引く」という姿勢が大事に、コミュニティづくりに取り組んでもらいたいなと思います。
広石さんコメント:「内と外を行ったり来たりすることを繰り返そう」
日本中の企業も施設も学校も、地域に開いていこうとしてはやっぱり難しい、と揺れています。でも内と外を行ったり来たりすることを繰り返す中で、他の人も伝わってくると思います。うまくいかなかった、と思っているかもしれませんが、地域に開くことの難しさの理由が見えたこと自体が成果であり、ここから次の段階に進んでいくことが重要になります。ずっと考え続けコミュニケーションを広げてほしいと思います。
報告5:認知症カフェ 大阪わちゃわ茶屋/矢野 由枝さん
地域でサロンを立ち上げたことのあるメンバーがいたり、多肉植物に詳しいメンバーがいたりと、それぞれに強みがあるこのチームのメンバーの共通点は、全員が「認知症サポーター」だったこと。そこでリーダーの矢野さんは、「認知症カフェ」を立ち上げ、各人の強みを生かしてできることをやってみようと考えました。
順調に地域の子ども館を借りられることになり、準備を進めました。強みを生かしてまずは本番、とトライしてみたところ、会場が火気厳禁であることに当日気づき、サイフォン用のアルコールランプが使えず、肝心のコーヒーが淹れられないトラブルがあったり、予定していた盛りだくさんのプログラムは十分に実施できず多肉植物の話だけで時間切れになってしまったりと、準備不足を感じる場面が多かったと言います。とはいえ、人に話すと「行ってみたい」との反応もあるので、今後は定期的に開催できたらと話しました。

広石さんコメント:「やってみる→振り返る→調べる、そして改善を」
「調べておいたらよかった」ということに気づかれていましたが、それは今からでも遅くないのでやってもらえたらと思います。自分たちの活動だけに閉じてしまうと、同じことの繰り返しになりやすくなります。やってみて、振り返って、他の事例も調べて、改善していくという「経験学習」が大切だと思います。
宝楽さんコメント:「時には専門性を手放して“好き”や“楽しみ”を軸に」
歌舞伎などの芸道で「守破離」という言葉がありますね。これまでに学んできたことを一度手放す、アンラーニングという考え方ですが、専門性高めてきた人たちが、仕事とは違うところで立ち上げたプロジェクトだからこそ、新しく気づけたことっていうのがあるのではないかと思います。
また、多肉植物という、「好き」や「楽しみ」を大事にしている活動もいいと思います。株分けができることで、コミュニティが広がっていくかもしれませんね。
全体講評:失敗も含めた地域活動のナレッジのシェアがええまちをつくる
「思い通りにいかないことの中に、重要な学びがある」
広石さん:地域活動は計画通りに進むものではありません。もし計画通りに進んでいる地域活動というものがあるなら、現場の複雑さを避けているのではと思うくらいです。でも、思い通りにいかないことの中に重要な学びがあります。今日の実践一つひとつが知見であり、日本の社会に必要とされているものだと思います。
宝楽さん:いわゆる“大阪のおばちゃん”は、ポケットの飴ちゃんを渡す“マイパブリック”の精神があるのに、場を設えるとなると「失敗しちゃいけない」って飴ちゃんの心を忘れがちなんですよね。
一発でホームランなんて出ません。「何か成果を残さなあかん」って思ってるかもしれないけれど、松下幸之助さんが言うように「やめたときが失敗であって、やめるまでは学びのプロセスでしかない」んです。多くは試行錯誤の中で形になっていくものだと思います。

「完璧じゃないからこそ、助けが必要で、一緒にやる仲間になれる」
広石さん:そうですね、完璧じゃないからこそ、みんなで助けないといけないし、それが仲間を増やしていくんです。発表で紹介されたように犬も参加して一緒にいたら仲間になるかもしれない。
そこで気づいたことは実践知となるわけで、それは案外みんなが知りたいことなんです。専門家や大学の先生に頼んでも出てこないナレッジを、皆さんは生み出しているんです。失敗も全部言葉にしてくれるのは、大阪だからこそじゃないかな。

宝楽さん:「For(誰かのため)ではなくWith(ともに)」という関わり方が大事ですよね。
バケットリストがそうですけれど、みんなが仲間になって、応援団になって、一緒にやりたいという人が広がっていくといいですね。
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今回の報告会でも、うまくいったことだけではなく、うまくいかなかったことや迷いや反省も含めて共有されました。その一つひとつが地域で活動するための手がかりとなり、これからの実践につながって「ええまち」をつくっていきます。
